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寄稿文−「万景峰92」号で祖国を訪ねて

同胞たちの歓喜

 8月26日の朝8時、「万景峰92」号で祖国を訪れる同胞たちが三々五々新潟出張所に集まってきた。門前には報道関係の記者とカメラマンがつめかけていた。埠頭への道路は千数百人の警官に遮断され、右翼団体の宣伝車が街中を走り回っていた。そうした険悪な状況の中でも何カ月も待たされてきた同胞たちの顔は明るかった。

 しかし、主権国家の船舶に対する類例のない不当な立ち入り検査が強行されると、乗船を待つ人たちの表情には不安の影がよぎった。だが、それも一瞬のことで、同胞たちは日本当局の非道に怒りを覚えながらも、歌と踊りで和気あいあいたる雰囲気をかもし出しながら待機を続けた。

 こうした同胞たちの楽観的で秩序ある姿に、報道陣も感嘆したようであった。午後7時に出港するという知らせが伝えられた瞬間、「私たちの勝ちだ、祖国の勝利だ」と喜びの声があがった。

 埠頭では入港反対を叫ぶ日本人グループを圧倒して、在日同胞の人びとが共和国旗を振りながら万歳を唱え訪問者たちを歓送した。

 28日の朝、予定より1日遅れて元山に着くと、新築された立派な税関の建物で休息をとりバスで平壌に向かった。窓越しに稲穂が重い頭をたれているのが目に映りうれしかった。

 平壌ホテルに到着すると従業員が総出で花を1輪ずつ手渡して迎えてくれ、熱い同胞愛が胸に伝わってきた。旅装をといてすぐ近くを流れる大同江の岸辺に出てみた。柳が青々と茂る川辺では、釣りをする人、子ども連れで散歩する人、犬の散歩をさせる人、ベンチで談笑するカップルや読書にふける人−。そうした人たちを見ながら、私はさわやかな気分にひたった。

「一致団結」の祭典

 平壌市内は9.9節(建国の日)の祝賀気分にあふれていた。国旗や花環、飾りつけのスローガン、イルミネーションが街角を彩り、果物、パン、焼いも、アイスクリームなどの屋台もにぎわい、パレードの練習に励む学生たちも活気に満ちていた。街並みの改装が至る所でおこなわれ、平壌は首都にふさわしいたたずまいに一新されつつあった。

 9月9日、建国55周年を記念する式典が開かれ、ここには平壌に滞在するすべての在日同胞が招かれ、在ロ、在中、在米の僑胞たちも多数参加し、外国人も多く目についた。会場の金日成広場には大同江を背にして赤、黄、青、白などの造花を持った数万の市民たちが立錐の余地もなく立ち並び、大会の規模の壮大さを見せてくれた。

 午前9時40分、軍楽隊の入場に始まり愛国歌に合わせて国旗が掲揚され、続いて人民軍最高指令官旗が掲げられた。大会は金正日総書記を迎えて幕を開いた。金永春総参謀長が記念報告を行なったのち、人民軍の閲兵式が始まった。軍靴の響く威風堂々たる行進は軍の士気の強靭さを遺憾なく示してくれた。

 閲兵式が終わると、手に手に造花や旗を持ち、それぞれの職場の特徴を表す造形物をはさんで、人民大衆のパレードが開始された。

 中央壇上に立つ金正日総書記への敬慕を込めた万歳と歓呼の声はまさしく天をつきその一糸乱れぬ百万人の行進と花文字を描く背景の市民たちの一致した心は、全朝鮮人民の一致団結を象徴してあまりあるものであった。百万人と口でいうのはやさしいが、閲兵式と合わせて軍民一致の燃えるような志がなければ、決して実現できない共和国独自の大パレードであった。

 行事が終わると、壇上のロビーに金正日総書記が姿を現して人びとの歓呼に手を振って答礼した。その英姿には、人民大衆の力を信じ、先軍領導の力で米国との銃声なき戦いに勝利するという自信が満ち溢れているようで、私は強く心を打たれた。(卞宰洙、文芸評論家)

[朝鮮新報 2003.9.22]