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〈関東大震災−朝鮮人虐殺から80年〉 過去清算回避の今日

 日本では関東大震災が発生した9月1日を「防災の日」と定め、地域ごとで人命救助などの教訓を行っている。しかし、われわれ同胞は国家権力機関と民族排他主義者らによる朝鮮人大虐殺事件を決して忘れることはできない。それから80年を迎えるこんにち、改めて事件の本質を探るとともに、歴史的教訓について照明をあてる必要がある。

 朝鮮人虐殺は、日本政府が「朝鮮人放火説」「暴動説」を流し、軍隊と警察を動員して行った。またその流言をマスコミがあおり、民衆も自警団を作って虐殺に加担した。つまり、虐殺は日本の権力機関によって計画的、組織的に行われた国家犯罪であるところにその本質がある。

 そして教訓は、第1に、植民地支配下に置かれた朝鮮人の処遇と運命がいかに悲惨であったかを認識するところにある。とくに当時の朝鮮人の処遇は、「イワシが魚か、朝鮮人が人間か」という言葉に象徴されるように悲惨であった。朝鮮人を殺した日本人は処罰されず、死体は放置されたままで、遺骨も親、家族のもとに返還されなかった。

 第2は、今を生きる新しい世代にその教訓を決して忘れてはいけないということを示していることだ。

 われわれ在日同胞は、九死に一生を得て生きのびた彼らの子孫でもある。そうした経緯を持つわれわれが、いかに民族的尊厳を守り生きていくかということが重要だ。

 第3は、祖国がいかに大切であるかということだ。われわれは民族をキーワードに団結して生きていかなければならないということを示している。

 6000人を超える犠牲者が出たのも、当時、われわれが国と民族を奪われていたからだ。

 第4は、日本政府がいまだに事実の調査と真相究明を行っていないもとで、謝罪と補償を実現させなければならないということだ。

 こうした教訓を踏まえ、日本ではこんにち、どのような問題が提起されているのか。ひと言で言うと、最近の日本の政治情勢は、当時をほうふつさせる情勢にある。

 周知のように政治、経済危機にある日本は、その出口を「対北朝鮮脅威」論から探り出そうとしている。

 日本は米国と結託し、朝・日関係を極度に悪化させようとしている。日本当局者は拉致、核問題が解決されなければ国交正常化はありえないと騒いでいる。

 さる6月には、「万景峰92」号の新潟寄港に際し、「戒厳態勢」を敷いてこれを邪魔した。7月には総聯新潟県本部に銃弾が撃ち込まれるなど、危険極まりない情勢をも作り出された。

 こうした雰囲気が醸成されるのは、朝鮮に対する過去の清算を回避し、再侵略の野望を実現させようとする日本の意図が見え隠れしているからだ。

 われわれは80年前の事件のようなことが繰り返されないよう、当時の朝鮮人虐殺に対する真相調査と謝罪、再発防止のための具体的な措置を講じるよう、日本政府に求めていかなければならない。

 また、われわれ同胞らも過去の歴史を正しく知って朝鮮人としての誇りを持って生きていかなければならない。

 さらには真の朝・日友好を築けるよう、日本市民とともに「平壌宣言」の履行を訴えていかなければならない。(金炯斤、東京都在住)

[朝鮮新報 2003.9.1]