性暴力から女性を守ろう−東京で同胞女性らによる学習会 |
女性に不利な判例
5日、東京都台東区の同胞法律生活センター会議室で第6回同胞女性らによる学習会(主催=在日本朝鮮人人権協会男女平等推進部会)が開かれた。学習会では、慶応大学大学院法学研究科の谷田川知恵さんを講師に招き、痴漢、セクシャルハラスメント、レイプなど、女性に対する性犯罪が法廷ではどのように裁かれるのかをテーマに講義が行われた。参加したのは女性12人と男性1人。 谷田川さんの話によるとある判例では、被告人が被害者をだましてホテルに連れ込み性交に及んだが、裁判官はこの際被害者が「そんなこといややから帰してくれ」と口先だけで言うのみであって、憤然としてその場を立ち去るなどしなかった、として「脅迫は認められない」と判断した。理由は「処女であれば本能的に肉体関係への危険を察知し、それを回避するために何らかの処置をとってしかるべき」ということ。 谷田川さんは性犯罪の場合、「被害者が強い拒否を示さないと、強姦罪に必要な脅迫とは認められにくい」ことを指摘する。 また別の判例では、被告人が強かんに必要な暴行、脅迫を被害者に加えていたとしても、被害者の化粧、服装、言動などから、被告人が被害者から「暗黙の了解を得た」と誤信していたときは強かんの「故意がなく、犯罪にならない」との例もある。谷田川さんは「この裁判では被告人は無罪だった。化粧や身なり、言動がどうであれ被害者の少女(16)は処女だった」と話し、裁判官から見て素行不良だと判断されれば「不利」。証拠の証明力は、裁判官の歪んだ判断に委ねられていると指摘した。 加害と被害の実情 調べによると実際に性犯罪の被害にあった女性のうち、男性の暴力に対し「必死で抵抗した」者は全体の35%、「何もできなかった」は33%を占める。それに対し、犯人が被害者を選んだ理由は「届け出ないと思ったから」が44%、「おとなしそうだから」が28%を占めている(内山絢子「性犯罪被害の実態」警察学論集53巻3−6号2000年)。 「ここで注目すべき点は、女性の服装が派手だという理由で犯罪に及んだものは、わずか1割にも満たないという点」。「数字には、自分より弱い相手、自分が必ず勝てる相手を選ぶ犯人の心の内には絶対ばれないという計算が込められている」と谷田川さんは話す。 実際に被害を受けた女性の3割は、裁判官のいうように「激しく抵抗」はできなくとも、暴力に対し必死に身を固くして迫りくる恐怖と闘っていたと考えられる。男性からの暴力に次いで、警察官や裁判官による「セカンド・レイプ(2度目の傷)」を受ける被害女性は少なくない。 家庭内での暴力 一方、家庭内での配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス=DV)に関する実態調査(アジア女性基金03−2)によると、1749人の回答者のうち夫からの暴力の経験の有無と頻度に関する問いに、ほぼ半数の46.9%の女性が「DV経験あり」と答えている。DVを内容別に分類すると、@殴る、蹴るなどの身体的に加えられる身体的暴力Aののしる、中傷するなどの精神的に苦痛を与えられる精神的暴力B生活費を渡さないなどの経済的暴力C友人とのつきあいを制限するなどの社会的暴力D意思に反し、性的な行為を強要するなどの性的に苦痛を与えられる性的暴力の5つに分けられる。女性たちが経験したという最も多いものが「命令口調でものを言われたり、怒鳴られた」、2番目に多いのが「平手で打たれたり、ものを投げつけられたり、叩かれた」、3番目が「何を言っても無視され続けた」である。 深刻な性犯罪とDV。そのどちらにも「女性」に対する見方や考え方に根本的な誤りがあることを指摘せずにはいられない。 男女平等の時代。この問題について職場や、家庭、学校で、世代を超えてさまざまな意見を交わしてもらいたい。問い合わせ先:同胞法律生活センター TEL 03・5818・5424。(金潤順記者) [朝鮮新報 2003.7.25] |