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〈生活相談きほんのき−パート2−9〉 ともに「朝鮮」表示、夫と離婚したいが

 Q.夫婦ともに外国人登録証明書の国籍欄が「朝鮮」です。結婚して10年になります。夫は仕事が長続きせず、家出を繰り返し、ここ数年は生活費を一切入れてくれません。もう愛想が尽き、離婚を考えているのですが、その方法について教えてください。

 A.「朝鮮」表示の夫婦の離婚については、基本的には双方が「朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)法を本国法とする」夫婦として、共和国法が適用される可能性が高いと思われます(法例16条、同14条)。共和国家族法20条によると、共和国においては裁判離婚だけを認容しており、また、日本の裁判所においても「少なくとも日本の方式による協議離婚の手続きをとっただけでは離婚の効力は発生しないといわざるをえない」(東京地判1986.11.17判タ655号27頁)とした判例等があります。

 しかし、現実に日本の役場においては、本人が特に「韓国人ではない」と言わない限り、その人の本国法を「韓国法」として処理しており、「朝鮮」表示同士の夫婦の離婚届は受理されていると思われます。

 なお、共和国対外民事関係法第37条3項によると、離婚当事者が離婚行為地すなわち日本の戸籍法の定めるところにより、離婚届を出し、受理された場合にも離婚の効力を認めています。離婚について双方の合意がある場合には、住所地の市区町村役場に離婚届を提出すればよいことになります。離婚届には成人2名の証人による署名と押印が必要で、住所地の市区町村役場の戸籍課に離婚届を一通提出します。また、離婚する夫婦の婚姻の事実を確認するために離婚届の提出時に、戸籍課窓口の係員に対し婚姻届を提出した市区町村役場を知らせる必要があります。

 これに対して、夫が離婚に応じない場合はどうでしょうか。その場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります。妻が夫の暴力から逃れるために別居しているような場合、夫の住所地を管轄する裁判所に調停を申し立てます。調停は、調停委員が間に立ち離婚協議を援助しますが、あくまでも当事者同士の話し合いなので、一方がどうしても離婚に応じなければ調停は成立しません。しかし、調停委員が両方の当事者の言い分を聞き、公平に判断した結果、離婚すべきとの結論に達した場合、家庭裁判所の審判によって強制的に離婚させる決定を下すこともあります。しかしこの決定も、当事者が不服として異議申し立てをすれば失効してしまいます。

 調停が不成立になるか、あるいは先の審判も失効した場合は、地方裁判所に離婚の裁判を申し立てるしか方法はありません。離婚裁判で離婚が認められるためには、法律で定められた離婚原因、すなわち@不貞行為A悪意の遺棄(妻に生活費を渡さなかったり、看護、介護が必要な夫を放置して家出するなど)B生死が3年以上不明のときC強度の精神病で回復の見込みがないときDその他婚姻の継続することが困難な重大な事由―などのうち、少なくとも一つに該当しなければなりません(民法770条)。

 設問の場合、上記のような離婚原因に照らすと、夫は家出をしたり、生活費を渡さなかったり家庭をまったく省みないわけですから、裁判離婚が認められる可能性は大きいでしょう。(金舜植・弁護士、同胞法律・生活センター相談員、おわり)

[朝鮮新報 2003.7.1]