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〈生活相談きほんのき−パート2−7〉 死亡した父に債務、相続放棄について教えて

 Q. 自営業を営む父が亡くなりました。取引先や銀行から少なからず債務があり、母と私を含め3人の姉弟では到底返済できそうにありません。相続放棄について教えてください。

 A1. 適用される法律

 亡くなられたお父さんが日本に在住している場合を前提として回答します。亡くなられたお父さんが日本国籍であれば日本法が、外国人登録証明書の国籍欄が「韓国」表示であれば韓国法が、「朝鮮」表示であれば日本法が適用されます。

 A2. 日本法が適用される場合

 @設問の場合の相続人

 お母さんとその子3人が相続人になります。相続の放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った」時から、3カ月以内に亡くなられたお父さんの住所地または相続開始地を管轄する家庭裁判所で行わなければなりません。

 「自己のために相続の開始があったことを知った」とは、お父さんが亡くなったことを知ったことを言い、お父さんの遺産、負債状況の詳細を知っている、知らないはまったく無関係です。相続放棄期間(3カ月)は家庭裁判所に伸長してもらうことができます。この伸長の申し立て自体も相続放棄期間中に行う必要があります。相続関係を立証するための戸籍の取り寄せなどに時間を要することが見込まれる時には、この伸長の手続きをとっておく方がよいでしょう。

 A後順位の相続人

 a 直系尊属

 お母さんとその子3人が相続放棄をした場合、次順位の直系尊属(注1)について相続が開始します。亡くなられたお父さんの両親や祖父母などが直系尊属にあたります。これらの者は、お父さんが亡くなったこと、及び先順位の相続人全員が相続放棄をしたことを知った時から3カ月以内に相続放棄をしないと、お父さんの債務を相続することになってしまいます。期間伸長の手続きは前述と同様です。

 b 兄弟関係

 お父さんの直系尊属が存在しないか、全員が相続放棄した場合、お父さんの兄弟姉妹について相続が開始します。これらの者は、お父さんが亡くなったこと、及び先順位の相続人全員が相続放棄をしたこと、または存在しないことを知った時から3カ月以内に相続放棄をしないと、お父さんの債務を相続することになってしまいます。期間伸長の手続きは前述と同様です。

 法定相続人は、みんな一度に相続放棄しておくのが便利でしょう。

 A3. 韓国法が適用される場合

 お母さんとその子3人が相続人となります。相続放棄の手続きは日本法と同様です。異なるのは、直系卑属(注2)が第1順位の相続人ですので、お父さんの孫、曾孫も相続放棄する必要があることです。また、兄弟姉妹の後順位で、まだ「4親等以内の親族」が相続人となりますので、これらの者も相続放棄が必要となります。日本法と異なる点にはくれぐれも注意が必要です。時折日本法で事務処理をしてしまった結果、相続放棄できなくなって、債務を負担させられてしまった例を耳にします。(林範夫、弁護士、大阪・コリア法律生活相談センター相談員)

※(注1)直系尊属〜父母または祖父母
  (注2)直系卑属〜子や孫

[朝鮮新報 2003.6.17]