〈心の目〉−夢は統一祖国縦断 |
視覚障害を持つ私が同胞社会の仲間入りをして以来、早1年が過ぎた。今では「同胞福祉連絡会」の活動を通し、多くの出会いに恵まれている。これも福祉への関心が高まりつつあるおかげだ。 ボランティア活動が盛んになれば人々にゆとりをもたらし、長い目で考えると南北朝鮮の対立をなくすことに繋がるのではないだろうか、私はある出会いを通じてそんなことを思った。 事務局メンバーや朝鮮大学校生とともに南から来日中のチェ・チャンヒョンさんとお会いしたのは5月20日の事だった。この時感じたことを書かせていただきたい。 彼は今、車椅子での日本縦断に挑戦している。実は過去にも北アメリカ縦断を成し遂げたパワフルで気さくな方だ。31年間家に閉じこもっていたが、障害者の生活と権利獲得に目覚め、自らが「明るい明日を作る会」を結成したのは1996年のことだった。 ボランティア普及を促進する傍ら現地の人々と交流し障害者の自立を促す目的で車椅子縦断を決意したという。 その一方、朝鮮民主主義人民共和国に車椅子を送る計画も進めており「次は南北祖国を縦断する」という夢を持っていると語った。思いはあっても何もしていない私は、障害を持っていても民族のためにできる事はあると気づかされた瞬間でもあり、恥ずかしい限りだった。 さらにこれらの活動には、なによりも彼の胸に秘められたもう一つの目的があった。それが「世界の平和と南北祖国の統一」である。 私もそれに応えたい一心で片言のウリマルを使い、いつの日か列車でピョンヤン・ソウル間を走破する夢があることを伝えると「ウォー!」と感銘の声を上げ喜んでくれた。この感動は忘れられないものになるだろう。 最後に彼は同胞あてに「見えない部分にも手をさしのべてほしい」とメッセージを投げかけた。きっとこれからのボランティアの発展に期待を込めてのものだろう。別れ際に手渡した贈り物の中でもっとも喜んでいただけたのは朝大生からの色紙だった。まさに福祉が結んだ一つの絆だと思う。 雨の中見送ってくれたチェさんの夢は私たちの願いでもあり、一刻も早い実現が望まれる。 情勢の厳しい折、同胞同士と祖国を結び合う何かが求められている。私はそれこそが福祉ではないかと思われてならない。 民族心が問われる今、老いや障害などで不安を抱くことなく生きられる同胞社会の確立がまずは必要で、その活動はいつか祖国にも波及して行くだろう。そこから余裕が生まれ、互いに思いやる気持ちが芽生えることは間違いない。 「福祉」に境界線などはなく、民族全体の課題である。チェさんとの出会いはそんなことを実感させてくれるものだった。 これからも、この出会いを原動力に同胞社会での福祉普及に仲間とともに頑張って行きたいと思っている。(梁進成、同胞福祉連絡会事務局) [朝鮮新報 2003.6.10] |