〈生活相談きほんのき−パート2−6〉 父が死亡、遺産をどう分けたらいいの? |
Q. 去年父が病気で亡くなりました。そろそろ遺産を分けようと思っています。どうしたらいいのでしょうか? 財産を有していた、亡くなった人の有する「本国法」を基準に分割します。ここで在日同胞にとっての「本国法」はどの国の法律かが問題となりますが、朝鮮が分断状況にあるため、いずれの法律を適用すべきかを決めるのはなかなか難しい問題です。具体的には本人の住所、財産関係の中心地、家族との結びつきなどの客観的要素と公的生活への参加、その国家への帰属意識などの主観的要因によって判断することになります。 本国法が朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)法と判断される場合、共和国対外民事法により、その居住地もしくは不動産所在地の法律が適用され、結果的に日本民法で分割します。韓国法と判断される場合は韓国民法で処理します。 最近受けた相談で特徴的だったのは、子が相続を放棄した場合、日本民法で処理すると孫が相続人になることはないのですが、韓国民法の場合は孫が相続人になります。日本民法しか知らない専門家が多いので気をつけてください。 この設問では亡くなった父が「朝鮮」表示の同胞であることを前提に説明します。登記実務上、「朝鮮」表示の同胞の場合は、日本人の相続と基本的に同じと理解していただいてかまいません。 A2.期限について 10カ月以内にしなければいけないのか? という質問をよく受けます。一概には言えませんが、資産から借金等の負債を引いた金額が6000万円以上であれば、相続税の申告をする必要がありえます。相続税が生じる場合には相続開始時から10カ月以内に申告し、基本的には10カ月以内に遺産の分割を終えなければなりません。相続税が生じない場合には10カ月以内に分割する必要はありませんので、1周忌前後をめどに考えればいでしょう。 A3.遺産分割に参加する人の範囲について 父が亡くなった場合にはその妻と子が相続人になります。 子は日本に住んでいなくとも、国籍が父と違っても当然相続人です。私が委託された遺産分割の相続人には朝鮮民主主義人民共和国に帰国した人、米国やヨーロッパ、日本の国籍を持つ同胞がいました。 A4.どう分割するの? 基本的には法定持分です。妻が半分、子が残りを均等に分けます。妻と子2人の場合には子は4分の1ずつです。ただし、相続人が合意すれば自由に分割できます。 A5.どういう書類が必要なの? 分割協議書を作成し、不動産や預金などの処理をする場合は各相続人が署名し実印を捺印し、印鑑証明書を添付しなければなりません。また、亡くなった人の登録原票記載事項証明書(なるべく居住歴や家族構成が書かれたもの)、相続人の登録原票記載事項証明書(父母の記載のあるもの)、土地建物の謄本や評価証明書、預金残高証明書なども必要になります。(沈植、司法書士・税理士、同胞法律・生活センター所長) [朝鮮新報 2003.6.10] |