〈6.15北南共同宣言と在日同胞社会−5〉 統一世代 |
民族教育史上初
「まさか南で公演するとは考えてもいなかった。南の人たちと心をひとつにできた感動は今も忘れられない」 東京朝高3年の昨年9月、在日朝鮮学生少年芸術団の一員(朝鮮舞踊)として、分断後初めて、そして民族教育史上初めて南の地を訪れた李美香さん(18、千葉県市川市在住)の感想だ。 「今思えば、1世らの故郷訪問事業が進む中、私より先に南を訪れるべき同胞がいたと思う。とても申し訳ないと思う。しかし、故郷の地を踏むことができずこの世を去った在日のハラボジ、ハルモニたちの歴史、統一を願う思い、民族教育の歴史などを歌や踊り、楽器、そしてウリマルで南の人たちに伝えられたことは自負できる。貴重な財産になった」と李さんは語る。 それに「私たちは統一世代とよく言われるが、その言葉の重みも少しずつ感じつつある」ともいう。 ひとつの文化を実感 初級部6年の時、そして南での公演を前に北を訪問している李さん。その一方で、初めて訪れた南の地は彼女にはどのように映ったのか。 「北も南も食べ物は同じ。それに都市を離れれば、風景もまったく一緒。領土、文化もひとつであることを実感した」 北南双方を訪れたことのある2世、3世が共通して述べる感想だが、当時17歳だった李さんの目にも同じことが映っていた。 「だからなおさら北と南に分かれて暮らしていることに疑問を感じる。南では私たちの訪問をよく思わない人もいると、厳重な警備がひかれていたが、そうした問題も交流を重ねていくことで解決されると思う。だって同じ民族だから。交流を拡大し、民族同士、力を合わせて幸せな国を作っていくのが自然ではないか」 航空業界へ 李さんは現在、幼い時からあこがれた航空業界に就職するため、神田外語学院国際エアライン科グランドスタッフコース(地上勤務、2年制)に通っているが、ここでも南での交流が貴重な財産として生かされている。学校には南の講師、留学生がいる。代表団の一員として南を訪問したことで、親しみも増す。互いの存在を理解し合うために何を話さなければならないかも知っている。 「統一と言えば北と南だけと思いがちだが、在日も民族の一員。統一を切実に願う当事者でもある。小さな交流だが、花を咲かせている。よきライバルでありアドバイザーでもある」 学校では国際コミュニケーションとしての英語のほか、ハングル、スペイン語、フランス語、中国語による簡単なあいさつ表現とそれらの国の文化を実習。異なる価値観や考え方を持つ人々の存在を知り、共に理解し合う大切さを学んでいる。 その勉強について「異文化を理解する第一歩は自文化をまず理解することから始まる。それが多文化を知る道にもつながる」というように、李さんは自民族をキーワードに意欲的に学んでいる。 朝鮮学校で培ったバイタリティー、民族を愛する心を土台に、「世界に通用する在日コリアン」をめざしている李さんだった。(羅基哲記者) [朝鮮新報 2003.6.10] |