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日朝交流の現場から−真実と真摯に向かい合う生徒たち

 戦前から続く日本の側にある課題から発生している朝鮮問題は、戦後になってもアメリカが作り出す国際戦略が大きく関係し、それに追随する日本政府のあり方が問題の根底にあった。朝鮮問題は実は国内問題であり、それゆえ千葉県内では、日朝学生間のトラブル解消への取り組み、南朝鮮の民衆との連帯、民族教育権差別撤廃の闘い、歴史教科書問題や日朝国交正常化運動、朝鮮の自主的平和統一支持運動などなどに取り組み、さまざまな形で学習と運動が進められてきた。

 無知蒙昧な私が、こうした活動に参加し、大きく影響を受けた。私がこんにちあるのは、職場の同僚をはじめ心豊かな素晴らしい多くの仲間のおかげである。

 約30年にわたる県内での日朝友好運動を背景として、90年代からは千葉県における朝鮮人強制連行の真相を調査する活動が日朝合同で進められ、私も調査団事務局の一員として携わってきた。約13年におよぶ関係者による調査研究活動の大きな成果として、2002年6月に「朝鮮人強制連行調査の記録 第6集 関東編1」が出版された。

 現在、その内容を県内でどう還流していくのかが大きな課題となっている。とりわけ私たち教育現場で、日朝関係史を正しく生徒に教え、戦前から続く民族排外主義を排除して新しい日朝関係の構築を確立するために、連帯して諸問題の解決を考えていける若者を育てることが求められている。

 報告書出版後、日朝首脳会談があり「9.17平壌宣言」が打ち出されたが、「拉致問題」が極めて意図的に大きくゆがめられて報道され、日本の犯した過去をないがしろにして、朝鮮民主主義人民共和国と朝鮮総聯、在日朝鮮人に対する攻撃、インターナショナル学校には大学入学資格を認めて朝鮮学校には与えないといった差別が新たに始まっている。

 こうした情勢の中で、2002年度に担当した3年生の日本史Bの授業(01年度と02年度継続で計6単位)では、近現代史に入り、日朝関係史を取り上げてきた。日本の植民地支配の経過と実態を学んだ2学期半ばには、不十分ながら千葉県の調査結果を含めて朝鮮人強制連行、従軍慰安婦問題などを扱った。

 授業後、生徒には「日本の植民地支配と戦後責任」という題で感想文を提出させた。

 ある女子生徒は次のような感想を書いている。

 「今、日本は、朝鮮の拉致問題でとても騒いでいる。謝罪を求めたり、家族を返せなどとテレビでも流されている。しかし、日本の戦後責任について騒がれることはない。こんなことで、国交正常化が進むわけがない。朝鮮人に対して日本がしてきたことは何も触れないで、日本人の被害者意識だけが強調されている。これによってむしろ、日本は過去の事実を消そうとしているかのようだ。戦争が終わったからといって事実がなくなるわけではない。日本の責任が消えるわけでもない。シラをきらず、事実関係を認め、謝罪していくべきである。ただ言葉でのおわびや表面的な金銭援助の形では問題の本質は解決しない。過去の歴史的事実をもみ消さずに、植民地支配時代の加害の事実をきちんと明らかにして、二度とこういうことが起こらないように伝えていくこと、日本側の誠意ある姿勢を示し、一日も早く解決していってほしいと思う」

 日朝関係史をほとんど知らなかった生徒たちは、拉致問題を大々的に報道する中にあっても、真実を知れば知るほど、ことの本質をとらえようと柔軟に、真摯に前向きに考える姿勢を示している。平和と人権の視点からも、今後、さらに調査報告書を活用していきたいと思っている。(山辺健夫、千葉経済大学付属高校教員)

[朝鮮新報 2003.5.27]