同胞同士、親睦の場−習字サークル「高麗」 |
今年4月、発足5年目を迎えた島根県下同胞たちの習字サークル「高麗」。メンバーは現在、出雲市をはじめ米子市からの参加者を含む同胞7人、日本人1人で、40〜50代が中心、70代の女性2人もいる。サークルは毎週土曜午後1時から約1時間、出雲市内の総聯島根県本部講堂で開かれているが、受講生らは「同胞同士の親ぼくが深まったことが何よりもうれしい」と一様に語っている。 20〜30年前、この地域ではカヤグムや朝鮮舞踊サークルが運営されていたが、メンバーの高齢化とともに中断、今では昔の話となってしまった。 同胞らが集まる場といえば、春の花見や夏の海の集い、新年会、送年会などだが、習字サークルの発足は、これらの親ぼくを深める場以外に、同胞らの生活を豊かにするものとなった。 同サークルは、山陰初中(当時、松江市、現在は倉敷初中に統合)の学父母らの要望により、1998年4月からスタートした。 同胞たちが集い、その場で何か身につけられればというオモニたちの強い思いと、「幼い時にならった習字をまたぜひ習いたい」という米子市の1世同胞の思いがひとつになって実現した。 また、偶然というか、講師に適任の同胞も存在した。講師は、朝大在学中から習字に興味を抱き、86年から本格的に学び現在、東京の「特待」(師範レベル)を誇る鄭潤吉さん(島根県同胞生活相談総合センター副所長、ガイドボランティア)である。 島根県は、日本全国でも習字に対する関心が高い地域。著名人士を多く輩出しており、至る所に各派が存在するほどの人気ぶりだ。 こうして開講したサークル、受講生のレベルは当初、「他人に見せられる水準のものではなかった」とか。が、鄭講師の熱心な指導、それに応えようとする受講生の努力によって、技量は徐々に上達。10級からスタートしたが、今ではメンバー全員が、楷書から行書へと進んでいる。 ちなみに楷書とは、文字を正確に書くための書体。特徴は、上辺が右上がりで、字画が1画ずつ離れてきちんと書かれているというところにある。一方、行書とは、楷書をつづけて書いたような書体をいう。楷書よりも速い運筆で、流動的な続け方をするところに特徴がある。 受講から4年間、最高で20段階のぼりつめ、5段に達した受講生もいる。 上達の要因は、「丁寧な指導」。日本のサークルなどでは、「見て習え」が基本。だが「高麗」では逆で、鄭講師が墨の削り方から筆の回し方まで1つひとつ教える。 そのかいあってか、朝銀の各種預金キャンペーン時などに受講生の作品を展示したところ、大好評を得たという。また県内の専門誌でも紹介されるほどで、受講生らはさらなるレベルアップをめざしている。 2段の李年子さんは、「1時間というわずかな時間だけど、自分自身と向き合う大切な時間」と言い、準4段の金烈子さんは、「自分の気持ちを率直に表現できる場」と語る。 また幼い時に習ったことがあるという鄭畢燮さん(9級)は、「今はみんなと会って話すことが一番の楽しみ」。 唯一、日本人の馬庭崇一郎さん(7級)は、「書道というものは心の内面がすごく率直に表れるものだと思った。朝鮮のみなさんと一緒にやれることが楽しくうれしい」と述べていた。(羅基哲記者) [朝鮮新報 2003.5.13] |