打ち出したい3、4世に合ったコミュニティの姿−セセデ問題協議会・李相大会長に聞く |
総連中央常任委員会の諮問機関として1月25日に発足された「セセデ(新世代)問題協議会」。4月中旬から15〜40歳の在日同胞を対象にした意識調査を行う。新しい世代が主人公になる同胞社会の姿、それを実現するための 総連の役割について建議案をまとめ、総連第20回全体大会を迎える来年の春までにも総連中央に提出する予定だ。同協議会の李相大会長(54=茨城県商工会会長、朝鮮大学校同窓会会長)に同協議会の構想、今後のスケジュールについて聞いた。 さまざまな生き方 ―発足後、どのように議論を進めてきたのか。 今年1月に総連中央から委任を受けたあと、2カ月間事務局を中心に議論を進めてきたが、新しい世代の同胞が何を考え、何を望み、自分たちの将来について、これからの生活設計、仕事などについてどう思っているのかを、私も、そしてわれわれ組織もあまりに知らないということを痛感した。つまり、セセデを今の組織の形の中におさめようとする所に無理があるということに気付かされた。 同胞が日本に暮らし始めて60余年、現在主流は3、4世になっている。私は2世だが、1世が故郷で培った生活の習慣やリズム、伝統はどんどんすたれ、日本での生活の中で新しく生まれ、育まれた在日同胞特有の習慣と伝統がひとつの形になってきたように思う。 15〜20年前までは民族差別が露骨で、就職の場も限られていたし、学問の道に進むのも一部の青年に過ぎなかった。しかし、3、4世は、きちんとした教育を受け、自分たちの志向と理念を持って、自分の進むべき道を歩もうとしている人がたくさんいる。学者、医師、弁護士、税理士として活躍したり、堪能な外国語を駆使して日本や世界の一流企業に勤める人たちも珍しくなくなった。 これは同胞社会が成熟し、同胞の価値観や生き方が多様化された証だ。また、日本国籍を取得する同胞が年々増えている一方で、私たち2世より民族としての自覚を持ち、自分のルーツを鮮明にし、同胞コミュニティに対する思い入れを深く持った若者がいると感じる機会も多々ある。 20年前とはその理念と意識が大きく変わった3、4世が、1、2世が着た服だからといってそのままそれを着るだろうか。私たちにできることは、こういう服もある、こういう服はこう着たら着やすいと教えることだろう。 この協議会は、新しい世代の同胞にどんな服を着せ、何を食べさせるのかを協議するためのものではない。3、4世の皆さんが同胞社会への帰属意識を失わず、それぞれのネットワークをいかに広げていくのか、また毎年数多くの若者が日本社会に同化していく心痛む現実をいかに食い止め、彼らに朝鮮民族としてのアイデンティティーをどのように持たせるのか、そのための 総連の姿はどのようなものなのかを真剣に協議する場だと思っている。 現状知ることから ―今後の日程について。 まず、3、4世の現在の自己意識、彼らが持つ民族性、将来に対する志向をきちんと把握することから始めたい。把握するということは、現状を認識する、理解するということだ。今まで当然知らなければならなかったことを知りえなかったという反省に立ち、この4月から15〜40歳の同胞を対象にしたアンケート調査を行う予定だ。 アンケートは朝鮮高級学校、朝鮮大学校に通う生徒、学生、朝青、女性同盟、青商会、留学同など傘下メンバー計3500人を対象に行う予定だ。ss 本来は 総連以外の民族団体や、いずれの組織にも属していない同胞も対象にすべきだが、今回は最初の作業として総連傘下の同胞を中心に行うことにした。また、セセデに対する総連の対応の現状についても調べてみたいと思っている。 ビジョンの提示
アンケートを通じてセセデの理念や志向、社会的な意識をしっかり認識したうえで、組織、同胞コミュニティーの形がどういうものになるべきかというビジョンをしっかり打ち出したい。討議のテーマは@セセデが主人公になる在日同胞社会の姿、つまり 総連の在日同胞社会ビジョン、Aこのビジョンを実現するための総連の役割だが、若い世代が望む同胞社会を作るためには、組織がどうあるべきかを話し合いたい。 重ねて言うが、同協議会はセセデを変えるための協議会ではない。発足の集いでも許宗萬責任副議長は「セセデの志向に合った科学的、建設的、創造的な方策を出して欲しい」と言われたが、メンバーの知恵を集め、いい案を作りたい。 01年7月に青商会が会員を対象にした実態調査を行ったが、その結果を見て驚いたことがある。自分を何人と呼ばれたいかとの質問で一番多かったのが「在日コリアン」。帰属意識を南北朝鮮、日本社会、同胞社会から選ぶ項目では「同胞社会」が92%を超えていた。この調査が同胞社会の現状をすべて反映しているわけではないが、彼らが言う同胞社会とは何なのか。大きな要素としてウリハッキョ(朝鮮学校)が考えられる。ともに学んだ同窓生、母校に対する愛着が帰属意識のパターンになっているのかも知れない。同胞社会を分析する一端に過ぎないが、コミュニティーに対するイメージが根底から変わっていることがわかる。つまり、彼らがイメージする同胞社会とは現在の認識とは違うかも知れないということだ。アンケートはわれわれの考え方を変えてくれるだろう。 大事な建議内容 ―討議の結果を建議案としてまとめ、 総連中央に提出するとしているが。 協議会は総連中央の諮問機関なので、24人の意見としてまとめた建議案を提出することを第一義とするが、私は建議することより建議する内容が大事だと思っている。 最後に同胞社会の未来に対する私の希望を言いたい。日本社会の中で、また国際化が進む中でも、民族としてのアイデンティティーを失わず、確固としたネットワーク、より自由で豊かな同胞社会を築き上げること。その同胞社会を拠り所にして、日本社会で通名を使わず、李さん、金先生と呼びあう未来を考えている。私たちに西原さん、金山先生は似合わない。 [朝鮮新報 2003.4.14] |