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〈ざいにち発コリアン社会〉 エイズ問題に取り組む看護師の李祥任さん

 現在世界でエイズウイルス(HIV)の感染者は、約4200万人いると言われている。中でもアジアは、近年感染が拡大する兆しを見せている地域。現在の感染者数は約720万人にのぼる。NGO「シェア」(国際保健協力市民の会)に所属し、日本で医療活動を続けている看護師の李祥任さん(27)は3月5日、アジアでも深刻な地域の一つ、タイに飛び立った。現地で2年間、支援活動に携わる。

深刻さ増すアジア

タイでボランティア活動中の李さん。子どもたちとはいつも仲良し

 李さんは現在、看護師の傍ら、NGOのボランティアとしてエイズ問題に取り組んでいる。

 タイへ出発する直前の2日には、かながわ県民サポートセンターで「エイズボランティア」育成講座を実施し、自ら講師を務めた。

 「日本国内でもHIV感染者は若い世代を中心に増えており、現在約7600人いると言われる。このまま行けば、アジアの感染者はアフリカを抜くことになる。自分には関係ないという若者も少なくないが、一人ひとりにとって大事な問題だけにしっかり知ってもらいたい」

 現在、アジアで最も感染率の高いのはカンボジア。国連エイズ合同計画(UNAIDS)カンボジア事務局によると、2002年現在、15〜49歳のHIV感染率(推定)は2.6%で、日本の感染率の130倍。

 隣国タイでも80年代後半からエイズが広がり、深刻な事態に陥り始めた。

 「当時、新規感染者は年間10万人を超えた。90年代はじめから政府・NGOの対策が進み、感染率も徐々に減少傾向にある」

子どもが大好き

入念に軟こうを塗る

 小、中、高と日本学校に通った李さんは中学1、2年時と高校の3年間、日本学校に通う同胞生徒の集まるサマースクールにも参加した。

 高校卒業後は看護専門学校に3年間通い、念願の看護師となった。

 「昔から子どもが大好きだったんです」

 看護師への道を志した当初から、「将来は発展途上国の恵まれない子供たちのために活動したい」との思いを抱いていた。そして、多忙な病院勤務の中で「ある思い」を描いていた。

 「医療技術の進んだ環境でどんなに経験を積んでも、医療水準の異なる国ではすべて活かされるとは限らない。現地で見ないとわからないこともあるのではないか」

 夢を叶えるのにちゅうちょしても仕方ないと、4年間勤めた病院を思い切って退職。どの団体に行けば自分の看護経験を活かせるかを調べ歩いた結果、タイで活動しているNGO「CARE」に出会う。

 そこで移住ミャンマー人への保健医療プロジェクトにボランティア参加する機会を得た。

 「出発前は現地で自分に何ができるのか、不安の方が先に立ったが、現地でやり残して後悔することのないよう、帰国日も決めずに行きました」

 こうして01年5月から12月までの約半年間、現地で活動した。

予防啓発に重点

 この経験は李さんにとって、日本での現実と自分自身を見つめ直すきっかけとなった。

 全身が痩せこけ、浅黒く肉の落ちた顔に大きな目が映えて見える…。誰が見ても予後がそう長くはない病人と分かる様相。

 「彼の家族が2年前の写真を見せてくれた。体のがっちりした男性がそうだと聞いたとき、切なさをこらえるのに必死だった」

 「触っても感染しないのか」。ある時、村のヘルスボランティアがNGOのスタッフに尋ねてきたことがあった。エイズ患者を抱える家族と地域が計り知れない不安を抱いていることを知った。

 タイではしっかりとした医療施設が整っておらず、エイズに対する知識が乏しいため偏見も少なくない。寝たきりのエイズ患者を恐怖の塊≠ニして軒下に追いやる家庭もあるという。

 そういう現実を目の当たりしに、「自分のやるべきことはエイズ問題に向けた国際活動だ」との決意に至ったという。

 タイでの2年間のボランティア活動を終えた後は、日本で地域感染者支援、予防啓発などのケアに重点を置いて活動していきたいそうだ。

 「日本でのHIV感染者の20%は在日外国人と言われている。日本ではまだまだ関心が薄い。同胞社会もそう変わりないだろう。今後、在日朝鮮、韓国人たちの問題にも積極的に取り組んでいきたい」(金明c記者)

[朝鮮新報 2003.3.27]