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〈心の目〉−ムジゲ支援、「地域力」で

 京都コリアン生活センターNPO法人「エルファ」が取り組んでいる活動のひとつに心身に障害を持つ同胞とその家族の支援がある。

 この取り組みはダウン症の子どもを持つ母親との出会いから始まった。これまで京都には、障害を抱える子どもを育てる在日コリアンの親が日々の子育ての悩み、そして将来の不安を同胞同士で話し合う場はほとんどなかった。そこでエルファは01年10月から月1回のペースで音楽を通じた交流や親睦会を持ち始め、昨年12月、「エルファムジゲ」が結成されたのである。

 家族たちのつながりを作ることと並行し、取り組んできたことがある。「エルファムジゲ」を支えるボランティアの勉強会だ。

 きっかけはエルファを見学に来た元養護学校教員・水谷一先生との出会いだった。

 京都市内の朝鮮学校にも障害を持つ子どもがいる。また、朝鮮学校への進学を希望している子どももいる。しかし、その受け入れは簡単なことではない。

 私たちが朝鮮学校教員や保護者の悩みを吐露したところ、水谷先生は親身になってくれ、京都府立丹波養護学校の大城まゆみ先生を紹介してくれたばかりか、朝鮮学校教員との懇談の場をセッティングしてくれたのだった。また、水谷先生は実状を知らねば、と事前に市内の朝鮮学校を見て回ってくれた。

 昨年8月、水谷、大城の両先生を囲んで行われた初の交流会には、障害児を受け持っていたり、関心を持つ朝鮮学校教員が参加した。専門知識がないなか自分自身に限界を感じている、学校の設備が限られ看護婦、保健婦がいない、保護者とどのようにコミュニケーションをとり、子どもにどう接していいのかなどの悩みを吐露していた。大城先生は教員らの話を聞いては、専門の相談所を紹介するなど、具体的なアドバイスをくれた。

 京都朝鮮第3初級学校教員の姜愛淑さん(24)は、常々「ウリハッキョ(朝鮮学校)にも障害児学級を作れないだろうか」と考えながらも、何をどうしていいのか暗中模索していたという。大城先生の話を聞き、朝鮮学校でも「環境作り」を進めるべきだと強く感じたそうだ。

 この環境作りとは「学校の力」プラス「地域の力」だと思う。そこで今年2月23日の2回目の勉強会には障害者教育に直接携っている人だけではなく、京都韓国学園など、今まで関わりがなかった人にも声をかけた。結果、当日は丹波養護学校から3人の先生と、ボランティアとして関わりたいという向上心を持った同胞や朝鮮学校教員も参加してくれた。

 当事者の悩みを共有し、一人ひとりできることを探す−。この輪がまさに地域の力だと再認識した時間だった。

 障害者を育てる家族、保護者の悩みはさまざまで底が深い。

 しかし、この2年の取り組みを通じて辿り着いたのは、真剣に悩み、声を上げたとき、支援してくれる人がいるということだった。

 温かく、心強い地域の人たちの支援。朝・日を越えた人々の手は希望をくれた。地域の人たちがあらゆる「違い」を超え、自分らしく生きることができる社会作りという理想を実現するため、「できることから始める」ことが簡単なようでとても難しく、そして大事なことなのかもしれない。(南c賢、NPO法人エルファ事務局)

[朝鮮新報 2003.3.25]