top_rogo.gif (16396 bytes)

〈心の目〉−心に響く魂の叫び

 昨年4月、東京朝鮮中高級学校で障害を持った在日コリアンの音楽サークル「tutti(みんな一緒に)」が始まった。同胞障害者を育てる家族たちのネットワーク「ムジゲ会」の協力を得て在日同胞福祉連絡会が運営しているものだ。

 このサークルを支えるボランティアを朝鮮大学校・教育学部で募集したところ、60人を超える人たちが名乗りをあげてくれた。

 私は突然、責任者に指名された。知識も経験もなく、あるとしたら初級部や中級部の時に同じクラスで過ごした障害を持つ友人との触れ合いだけだった。思ってみれば「やってみよう」と心動かされたのはこの友人の存在からだろうか。

 責任者を引き受けたものの、当初は思いが膨らむばかりで気持ちだけが先走り、何一つ行動に移せなかった。

 練習の初日、キーボードやマラカスを使って参加者の名前が一人ひとり紹介された。大きな声で「イェ(예)」と返事をし、それぞれが自分の思いを楽器で表現していた。みんなが生き生きしていた。

 練習は毎月第3日曜日。ボランティアの役割は、メンバーの演奏を補助するだけではなく、練習の1週間前まで参加状況を電話で確認し、練習の当日は最寄りの駅まで送り迎えをする。月に一度学習会も開いている。

 このように根気強い取り組みを重ねる過程で、子どもたちに変化が現れだした。

 私を見ては笑い、手を握って笑顔で接してくれた時の感激と喜びを今でも忘れられない。あるオモニは、送り迎えに必ず付いてこられていたのだが、いつの日かボランティアに遠い道のりを任せてくれた。

 話しかけても、歌を歌っても反応がなかった彼らを見た時は逃げたくもなった。その姿を見たあるオモニに「気持ちはありがたいけど専門的な知識がなければ余計に心配」と厳しく指摘され、目の前が真っ暗になったこともある。

 それだけに子どもを任せてくれた事は本当に嬉しかった。

 彼らが朝鮮人であるという事実から出発し、当たり前に自己確認をさせてあげたい。いわゆる「健常者」と「障害者」の触れ合いを自然なこととして受け止めて欲しい…。サークルを支えるボランティアの思いだ。

 練習も回を重ねるごとに本格的になってきた。チャンダン(朝鮮のリズム)に合わせ、プク(朝鮮の太鼓)を叩き、歌を歌い、オッケチュムを踊るまでに成長した彼らの姿に驚かされるばかりだ。3月22日には神奈川に住む同胞青年の協力により、横浜の赤レンガ倉庫で初のコンサートが開かれることになった。

 彼らが奏でる音は障害の壁を越え、朝鮮人の誇りを持って生きる魂の叫びとして私の心に響いている。彼らの姿に私自身が励まされている。(夫由江、同胞障害者の音楽サークル「tutti」ボランティア、朝鮮大学校・教育学部保育科2年)

[朝鮮新報 2003.3.4]