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温かい家庭の雰囲気−朝鮮家庭料理・陽(東京都杉並区)

 かつては金剛山歌劇団の名舞踊手。「意外かしら?」と少しはにかむ金明舜さん(57)。引退後、地元の東京朝鮮第9初級学校で学生たちの舞踊講師を11年務めた。しかしその後、体調を崩すことに。

 「それまで舞踊一筋が、そうもいかない。これを機にここらで腰を据えようかと、店を始めた」

 とは言っても武士の野良仕事、そこで講師活動の合間をぬって料理の修業を始めた。 「喫茶店の厨房とか弁当屋さんとかでアルバイトをしながらおぼえました」。モランボン料理学校に半年通ったのもこの頃だ。

 「15年前のオープン当時は、朝鮮家庭料理と言ってもいまいちピンとこない頃でした。でも焼肉だけではなく、朝鮮の一般家庭にでる料理を食べてもらいたくて…」

 「家庭」というコンセプトを大切にしたいと話す。…海を隔てた異国の地で1世が作る故郷―朝鮮の家庭料理。そしてその味を守るということ…。

 そんな思いがこめられた店には、同胞はもちろん、日本人やニューカマーなど幅広い客層が足を運ぶ。温かさの中にも時おり、顔をのぞかせる芸術的センスに魅せられて、遠く他県からの来客も多いとか。客に合わせて辛さを調節したり、季節ごとにメニューにはない旬のものを提供したりと、細かな心遣いが家庭的な雰囲気をいっそう高める。

 「表舞台で華を咲かせたのも過去の話。今は陰ながら同胞社会を支えていきたいと思っています」

 心の温まる、そんな笑顔が印象的だった。(健)

 おすすめメニュー 納豆チゲ定食(980円)、生ガキ(850円)、ケヂャン(1380円)、牛スジ煮込み(650円)、ナスのチヂミ(650円)、春菊のナムル(380円)など。

 営業時間 午後6時〜11時。水曜定休日。TEL 03・3314・9268。

[朝鮮新報 2003.2.26]